商社マンのリアルの仕事をぶっちゃけます。【39年の商社マンライフに基づきお話しします】
こんにちは 総合商社に39年間勤務したTED山本です。
今回は私の長い商社マン人生に基づいてどんな仕事をしているかをご説明します。
本ブログの内容は以下の通りになっています。
- 日々プロジェクトの契約履行、次の契約の仕込みなどを行なっています。
- 儲けが薄くなった貿易による商品の売買の仲介(トレード)。それでも続けている理由は?
- 仕掛けが大きくなった分、修行期間が長くなった商社の仕事。勝負は裁量が与えられる40代から。
- まとめ
私は総合商社で39年間、営業を中心に仕事をしてきました。
商社冬の時代と言われたその昔から、投資やプロジェクトを取り仕切る、リスクを取るビジネスに変化する、商社のビジネスを、この身を持って体験してきました。
商社では、ビジネスの勝ちパターンが変わることを敏感に察知して、常に新しいビジネスの形を模索し、チャレンジしています。
商社の仕事といっても、会社によって、また営業に所属しているか、経理財務に所属しているか、はたまた国内にいるか海外にいるかで千差万別です。
今回は私の日々のビジネスの取り組み状況をお話しします。(現在私は国内の勤務です。)
総合商社のビジネスの一端をご理解いただければ嬉しく思います。
日々プロジェクトの契約履行、次の大型契約の仕込みを行なっています。
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私は資源・エネルギー分野に所属する営業マンです。ポジションとしては、ビジネスラインの長をしていて、プロジェクトを取り仕切る立場でし事をしています。
私の目から見た、部下の仕事を含めてお話しします。
プロジェクトの契約履行
現在私のビジネスラインでは、10年ものの大型契約と、4年ものの中規模のプロジェクトをいくつか抱えていて、それが収益源になっています。
日々の仕事は、プロジェクトに関する契約を履行する業務なのです。
当然のことですが、収益は契約締結後、つつがなく契約を履行することで得られるので、契約履行は非常に重要な業務です。
契約には、我々のお客様と我々の間の契約、それ以外に我々と下請け業者さんとの契約が複数あります。
また海外のサプライヤーとの契約も複数あり、これをマネージしていきます。
かつては、我々は海外のサプライヤーの代理店として、サプライヤーが主、我々商社は代理店として従の関係でした。
しかし、我々が現在行なっているプロジェクトは、お客様の問題を解決するために、我々が企画して組み上げたものなので、我々と海外サプライヤーとの関係は、対等な関係にあります。
互いに契約に基づき、お互いを尊重しつつ、契約を履行していくビジネススタイルをとっています。
部下のジュニアスタッフが、契約を読み込んで理解した上で、日々お客様とコンタクトを取りつつ、お客様の要望を聞きつつ、お客様の契約履行を促しています。
お客様との関係も、かつての「お客様は神様」といった主従の関係ではなく、お客様の問題を解決する、頼りになるパートナーとして、互いに敬意を払いつつ、日々契約履行のアクションをとっています。
何も問題がなければ、ジュニアスタッフが粛々と契約履行業務を行い、小さな問題であれば、中間管理職の女性マネージャー(美人で極めて有能な方)が解決してくれます。
私のやることは、マネージャーが差配する、業務履行にあたって必要な決済を与えることです。
時々彼らでは解決できない問題が発生します。
2年前に、処理すべきリサイクル物質が、契約時の仕様と少し外れているために、サプライヤーの工場の改造が必要で、そのために数十億円の追加費用が発生する、という事態が持ち上がりました。
お客様は、そんな追加費用を払うわけにはいかないと言い張り、サプライヤーは、仕様外なので、今のままでは受け取れない、と言い、マネージャーレベルでは、デッドロックに陥りました。
私は、部下の報告を聞いた上で、お客様のところに出向いて現状を細かく聴取して、問題点を正確に把握する様努めました。
これは、お客様、海外サプライヤー、我々商社が知恵を絞って解決策を作り出さなければならないと判断しました。
お客様の社長と面談して、私が本件取り仕切り、解決の為最大限の努力をするので、社長が陣頭指揮を取って、本件問題解決にあたってもらいたい旨談判し、了解を得ました。
その上で、海外サプライヤーのプラントに技術コンサルタントと共に出張して事実確認のため打ち合わせると共に、工場で我々の仕事をしているプラントマネージャーと私のサシで面談し、問題解決のため、本気で知恵を絞る事を確約させました。この男は、優秀で信頼の置ける人です。
また、解決の方向性について、技術コンサルタントの技術的な知見をもとに、費用削減のための提案をして、プラントマネージャーに、我々の提案に従った、コスト削減の検討を約束して頂きました。
この問題の解決に、1年以上の期間がかかりました。
その間、我々とお客様間、我々と海外サプライヤー間、お客様、海外サプライヤー、我々の3者間の面談を行い、解決のため知恵を絞りました。
我々は、お客様と海外サプライヤーの両方に努力を促しつつ、最終的には、当初サプライヤが主張したコストを従来の6割程度に抑えると共に、お客様から処理する物質の処理委託量を2割程度増量させることに成功し、単位処理量あたりの費用増加を抑えました。.
問題を解決してみると、我々の契約量は2割増加、単価も上昇したので、収益も増し、お客様からは、問題解決に感謝され、サプライヤーからは、契約打ち切りを回避し、結果的に契約量の増大につながり、さらに信頼される様になりました。
次のビジネスの開拓
ビジネスには寿命があります。
どんな素晴らしい、人様のお役に立ち、高収益の仕事にも、時節の変化に伴い、終わる日が来ます。
常に我々は、お客様の新たなニーズを理解して、その解決や促進のための、プロジェクトを企画し提案し、契約していかなければなりません。
ニーズの掘り起こしと、新たなサプライヤーの発掘は、鶏と卵の関係にあります。
お客様のところに行って、漠然と、何に困ってますか? 私たちにできることはありませんか?と聞いても、こんな問題があるから助けて下さい、ということにはならないのです。
日頃の付き合いから、このお客様は、こういう問題で困っている。
そういえば、同業種のあのお客様もこの問題で困っている。国内には解決手段が無い、または高価である、海外のサプライヤーを担いて解決できるかもしれない、という目星をつけ、海外のネットワーク(海外の支店の同僚や我々自身のネットワークを通じて)から、サプライヤーに協業を打診します。
日本マーケットで、共同で顧客掘り起こしをしようという、持ちかける訳です。
まずは、軽い関係づくりのため、一緒にビジネス開発をやろうという意向を示した、意向書(Letter of Intent: 略してLOI)を結びます。
顧客を訪問して回って、ニーズの強さや、市場規模、収益の可能性について、実地で確認して回ります。
その上で、ビジネススキームを構築して、それに従って、海外のサプライヤーとの間で覚書(Memorandum of Understanding:略してMOU)を結び、独占的(Exclusive)に日本におけるビジネス開拓を行う権利を押さえます。
実は、先日締結したMOUに従った、更なるマーケッティングのため、国内出張のため新幹線で移動中に、この記事を書いているところです。
実際にビジネス成立のためには、色々な問題を解決したり、ビジネススキームで不足しているところを別のサプライヤーや下請け業者さんで補ったりする業務があります。
過去の事例を見ると、案件成立までに、早い場合で1年、大型の案件は、最初の仕込みから、契約成立まで4年を要しました。
ビジネス開拓は、失敗するものが圧倒的に多く、所謂(いわゆる)千三つ(千件手掛けたら、ビジネスとして花開くのは3件くらいという意味)です。
それほど打率は悪くありませんが、実際には失敗する数の方が圧倒的に多いのです。
我々は、ビジネスになりそうな案件を、客観的なデータと、長年培った勘と、いい案件を嗅ぎ分ける鼻で、成功の確率を上げていきます。
儲けが薄くなった貿易による商品の売買の仲介(トレード)。それでも続けている理由は?
今でも重要な商品の貿易による売買の仲介(トレード)。でも儲かりません。
同じ部で、資源鉱山を保有している部隊があり、こちらの収益は半端ではありません。
年間の純利益が、数十億円から下手をすると100億円を超えることもあります。
大半は、海外に保有する鉱山からの連結利益で、国内のビジネスは赤字なのです。
それでも同じ部の中で、同じ資源をトレードしている部隊が居ます。
国内のメーカー向けに資源をトレードで供給します。
例えば、ロシアものの資源を日本へ供給するトレードビジネスが有ります。
品質も日本のお客様の仕様に合わせる為に、ロシア内で特別な前準備をしたうえで、
日本へ輸送して販売しています。
ロシアは極東のウラジオストック港やナホトカ港からの距離が近い分、輸送距離が短くデリバリーの面でメリットがあります。
収益源は、海外の鉱山会社の代理店(Seller's Agentといいます)として入るコミッション、国内のお客さんにデリバリー上お客様がやるべき業務を代行して行う顧客対応代理店(Buyer's Agentといいます)のコミッションです。
どちらのコミッションも年々減少して、収益的には非常に苦しい。
トレードでの儲けはトントン、下手をすると赤字です。
何故儲からないトレードを行なうのか?
それは、トレードを通じて商品の鉱物の知識を深め、マーケットに対する勘を育てること、またトレードを通じて有望な投資先を見出そうとする為です。
また、トレードに従事していると、目先の契約を何とかとろうとがむしゃらになります。そういうガツガツしたハングリー精神を養うのも、トレードを行うメリットです。
そうやって資源の知識とマーケットの勘を養い、ハングリー精神の豊富な人間が、投資業務を行うことになるのです。儲けは鉱山への事業投資やプロジェクトの契約履行から得る様になっています。
ビジネスの仕掛けが大きくなった分、修行期間が長くなった商社の仕事。自分らしい仕事ができるのは裁量が与えられる40代から。
私が総合商社に入った35年前、各社の純利益は数百億円でした。
現在5大総合商社の純利益は、数千億円で、かつての利益レベルの20倍以上になっています。
色々な理由はありますが、商事会社が、トレードと貿易によりコミッションビジネス中心に稼いでいたものが、自らビジネスの仕組みを考えて、プロジェクトものや事業投資を行うようになったのが、主な理由です。
ビジネスの規模が大きくなり、投資やプロジェクトの仕掛けが大規模になるに従って、入社して直ぐに、バリバリ稼ぐ、という時代ではなくなってきました。
若手は、投資やプロジェクトを成立させるために、リスク分析をしたり、社内の投資・融資の委員会をクリアーするために、社内の打ち合わせや、情報収集、企画書の作成に大きな時間を割くようになりました。
私の手掛けているプロジェクトにしても、ジュニアの皆さんは、資料を作ったり、下請け業者の皆さんから情報収集をしてもらっていますが、全体の企画をして、お客様や海外のサプライヤーと交渉するのは、上に立つ私の仕事です。
大型のプロジェクトを企画してそれをお客様に売り込んだり、サプライヤーを説得したりする仕事を行うには、長い経験に基づいた企画力・交渉力が必要になります。
また交渉するにしても、会社幹部の了解を取り付けるには、ジュニアの皆さんでは無理で、やはり社内でも責任を持った立場でないと難しいという事情があります。
若いうちは下積が多いが、自分が差配できるようになれば、大きな喜びがあるのです。
プロジェクトの差配、大型案件への投資という、ビジネスの醍醐味を味わえるようになるのは、40歳台になって、経験を積んでからなのです。
そのプロジェクト成立の瞬間の喜びは、何者にも変えられないものがあります。
まとめ
本ブログのまとめは以下の通りです。
- 我々の商社営業の現場では、日々プロジェクトの契約履行を主に行っています。次の契約の仕込みなども行なっています。
- 今も貿易による商品の売買の仲介(トレード)業務は行っていますが、儲けが薄くなりました。それでも続けているのは理由があります。
- 仕掛けが大きくなった分、修行期間が長くなった商社の仕事。自分らしい仕事が行えるのは裁量が与えられる40代からです。それを目指して、研鑽をしています
某総合商社に勤務して39年、色々な経験をしてきました。成功も失敗も。
海外駐在の経験もありますから、ビジネス関係でご質問のある方は下に登録して、コンタクトください。
長く勤める間、私はアップダウンの大きな経験をしてきました。
好調の時は、新たなプロジェクトが話題になり、テレビの番組で取り上げられ、インタビューされる事もありました。
一方で、駐在中の不手際の為上層部の逆鱗に触れて、窓際族になり、どん底を経験したこともありました。
そんな折出会った瞑想とヨーガの力で、私は何も無かったスクラッチの状態から、数百億円のビジネスを作り出すことができ、復活する事が出来ました。
この驚異の瞑想とヨーガの大きな力にご興味がある方は、以下のブログ記事をお読みください。
https://ted-yamamoto.com/meditation-summary/